ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女

展覧会概要

モローが描いた女性、一堂に会する。

象徴主義の巨匠ギュスターヴ・モロー(1826-1898)は、神話や聖書をテーマにした作品で知られています。産業の発展とともに、現実主義的、物質主義的な潮流にあった19世紀後半のフランスにおいて彼は、幻想的な内面世界を描くことで、真実を見いだそうとしました。本展は、そのようなモローが描いた女性像に焦点をあてた展覧会です。

出品作品は、パリのギュスターヴ・モロー美術館が所蔵する、洗礼者ヨハネの首の幻影を見るサロメを描いた名作《出現》や、貞節の象徴とされた幻獣を描いた《一角獣》を含む油彩、水彩、素描などによって構成されます。神話や聖書に登場する、男性を死へと導くファム・ファタル(宿命の女)としての女性、誘惑され破滅へと導かれる危うい存在としての女性、そしてモローが実生活において愛した母や恋人。展覧会では、彼女たちそれぞれの物語やモローとの関係を紐解いていき、新たな切り口でモロー芸術の創造の原点に迫ります。

展覧会情報

大阪展

会期 2019年7月13日(土)~9月23日(月・祝)
会場 あべのハルカス美術館
〒545-6016 大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16F
開館時間 火~金 :午前10時00分~午後8時00分
月土日祝:午前10時00分~午後6時00分(入場は閉館の30分前)
休館日 7月22日(月)、7月29日(月)、8月5日(月)
主催 あべのハルカス美術館、読売テレビ、読売新聞社
後援 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協賛 大和ハウス工業、光村印刷
特別協力 ギュスターヴ・モロー美術館
企画協力 NHKプロモーション
協力 日本航空
お問合せ あべのハルカス美術館 06-4399-9050 10:00~18:00
展覧会開催中の火~金(祝日を除く)10:00~20:00
 


福岡展

会期 2019年10月1日(火)~11月24日(日)
会場 福岡市美術館
〒810-0051 福岡県福岡市中央区大濠公園1-6
 


東京展※東京展は終了しました。

会期 2019年4月6日(土)~6月23日(日)
会場 パナソニック汐留ミュージアム
4月1日より館名が「パナソニック汐留美術館」に変わります。
〒105-8301 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック 東京汐留ビル 4階
主催 パナソニック汐留ミュージアム、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
後援 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、港区教育委員会
協賛 光村印刷
特別協力 ギュスターヴ・モロー美術館
協力 日本航空
 


展覧会構成

展覧会のみどころ

 14年ぶりにパリのギュスターヴ・モロー美術館から名作の数々を一挙公開!
パリのギュスターヴ・モロー美術館の全面協力をいただき、《出現》(1876年頃)、《エウロペの誘拐》(1868年)、
《一角獣》(1885年頃)などを含む数多くの名作が一堂に会します。
 初来日作品を含む、花や恋人との交流を伝える素描や手紙を展示!
実生活で身近な存在だった母ポーリーヌと恋人アレクサンドリーヌ・デュルーとの交流を伝える素描や手紙から、人間モローの素顔に迫ります。
 モロー芸術と女性をテーマに紹介!
最愛の女性から、歴史や文学を彩るファム・ファタル(宿命の女)まで、女性像にフォーカスした展示により、華麗かつ深遠なモローの芸術の根幹にふれます。


第1章 モローが愛した女たち

モローにとって「世界で一番大切な存在」であったという母ポーリーヌや、結婚はせずとも30年近くもモローに寄り添い続けた恋人アレクサンドリーヌ・デュルー。本章では、モローが実生活においてどのように女性たちと関係性を築いていたかに注目します。それらの女性たちを描いた愛情と親密さ漂う作品や、彼女たちにゆかりのある作品、資料などを通して、画家ギュスターヴ・モローの素顔の一端を探ります。


《アレクサンドリーヌ》 インク・鉛筆/紙 22.5×16.7cm  東京展のみ
 Photo ©RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF

モローとアレクサンドリーヌとで交わされた書簡は、残念ながらモローの指示で焼却されてしまったが、彼が描いた数多くのアレクサンドリーヌの素描からは、彼女に向けられた画家の深い愛情が感じられる。モローが語るところによると、彼女は穏やかで高潔な精神をもつ女性だったという。

《パルクと死の天使》 1890年頃 油彩/カンヴァス 110×67cm
 Photo ©RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF

運命を司る三人の女神パルクの中で最も恐ろしいアトロポスが死の天使の軍馬の手綱をつかみ、荒涼とした風景を歩み進んでいる。本作は、アレクサンドリーヌが亡くなった1890年に描かれた。顔のない黒く描かれた天使や朱色に輝く星が、激しい不安をかきたてる。パルクに母ポーリーヌの姿を重ねたとの指摘もある。


第2章 《出現》とサロメ

洗礼者ヨハネの首の幻影が現れるという稀有な発想、さまざまな時代や地域の建築・装飾様式を独自に取り入れた描写、膨大な習作やヴァリアントを伴う作画プロセスなど、多様な特徴と魅力をそなえるモローの代表作《出現》は、19世紀末の芸術家たちに多大なインスピレーションを与えました。本章では、《出現》を核としながら、モローが描いた「サロメ」のさまざまな側面をとりあげ、この主題に魅せられたモローならではのイメージ生成の背景をたどります。


《出現》 1876年頃 油彩/カンヴァス 142×103cm
 Photo ©RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF

本作は、1876年のサロンのために描かれたが、完成されなかった作品。そのままアトリエに保管され、後年さらに線描が加えられた。福音書に、踊りの褒美に洗礼者ヨハネの首を所望したと記述されるヘロデ王の娘サロメは、本作では、裸体に豪奢なヴェールと宝飾品を纏い、左手を真っ直ぐ伸ばして中空に浮かぶヨハネを見据える。一方、光輪を持つ聖なる存在であるヨハネも、血を滴らせながら目を見開いてサロメを凝視する。サロメとヨハネの関係を際立たせる構図やサロメの前に幻影として出現した斬首のヨハネという図像は前例がなく、モローの独創性が発揮された彼の代表作である。

《サロメ》 1875年頃 油彩/カンヴァス 80×40cm
 Photo ©RMN-Grand Palais / Christian Jean /distributed by AMF

モローは、1876年のサロン出品作《ヘロデ王の前で踊るサロメ》のために数多くの素描や習作を残した。本作は、サロメの立ち姿や衣装を研究するための油彩習作である。高く結い上げられた髪型や宝石を鏤めた衣装にはフローベールの小説との類似が、また衣装の細部のイメージ・ソースには同時代の雑誌や書籍などが指摘される。


第3章 宿命の女たち

モローは、男性を誘惑し、翻弄し、命すら奪うファム・ファタルとしての女性を数多く描く一方で、男性からの誘惑の標的となり、数奇な運命をたどった女性もしばしば主題としています。そうした作品においても同様に、彼女たちの妖しく艶やかな姿態は見るものを幻惑せずにおきません。本章では、七宝細工のような輝く色彩と、想像力をかきたてるドラマティックなイメージのうちに、女性のもつ複雑で多面的な性質を浮き彫りにするモローの思考と感覚に迫ります。


《エウロペの誘拐》 1868年 油彩/カンヴァス 175×130㎝
 Photo ©RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda /distributed by AMF

古代ローマの詩人オウィディウスによる叙事詩『変身物語』のなかの、ユピテルによるエウロペの誘拐の一場面を描いた作品。オリンポスの主神ユピテルが、フェニキアの王女エウロペに恋し、海岸で侍女たちと遊んでいた彼女を、牡牛の姿になって近づき、さらってしまう。のちにエウロペはユピテルとの間に3人の子どもをもうける。ユピテルとエウロペの視線は、不自然に交差し、まるでその後結ばれる二人の関係を暗示しているかのよう。1869年のサロン受賞作品。

《ヘラクレスとオンファレ》 1856-57年 油彩/カンヴァス 104.5×65cm
 Photo ©RMN-Grand Palais / Christian Jean /distributed by AMF

古代ギリシアの英雄ヘラクレスとリュディアの王女オンファレを描いた作品。ライオンを素手で倒すなど、数々の偉業を持つ英雄ヘラクレスだが、本作では狂気で友人を殺してしまった罰として王女オンファレの奴隷として売られたのち、彼女の愛人となったヘラクレスが主題となっている。二人はそれぞれの持物を交換した姿で描かれており、ヘラクレスは糸巻棒を持ち、オンファレはライオンの皮を羽織り棍棒を手にしている。女による男の支配という理念が暗示されている。


第4章 《一角獣》と純潔の乙女

貞節の象徴とされ、純潔の乙女にだけは従順になるという幻の動物一角獣を、モローは美しくたおやかな女性に抱かれた姿で描きました。汚れなき女性のイメージは憧れの具現化であるとともに、その冒しがたい清らかさゆえに男性を惑わせ狂わせるものでもありました。本章では、そうした女性像にひそむ抗いがたく残酷なまでの魅力を通じて、モローにとってのファム・ファタルのイメージ形成をあらためて問います。


《一角獣》 1885年頃 油彩/カンヴァス 115×90cm
 Photo ©RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF

純潔の乙女のみが捕獲できるとされ、とくにキリスト教では聖母マリアの処女性と関連付けられてきた一角獣。1883年に一般公開となったタピスリー《貴婦人と一角獣》に魅了されたモローは、水辺から離れた高台にある大樹の下の密やかな空間を舞台に、複数頭の一角獣が豪奢に着飾った婦人たちにかしずかれる場面を描いた。中世の装飾写本を思わせる優雅な彩色や緻密な装飾描写により夢幻的な画面が生み出されている本作は、未完成ながらも、モロー芸術を代表する名品のひとつである。

《一角獣》 1885年頃 油彩/カンヴァス 78×40cm
 Photo ©RMN-Grand Palais /Christian Jean / distributed by AMF

現在パリのクリュニー中世美術館に所蔵されているタピスリー《貴婦人と一角獣》が、1883年に一般公開された。モローはこの綴織に刺激を受け、一角獣の主題題に取り組み始めたとされる。本作はそうした中でも最最初期の作例と考えられる。


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