「DESIGN MUSEUM JAPAN:日本のデザインを探る」展<終了しました>

展覧会概要

縄文時代より1万年以上もの間、独自の生活文化を育んできた日本。
各地域の無名の人々によって育まれてきた〈デザインの宝物〉を
世界の第一線で活躍する8名のクリエーターがリサーチ。
その背景にある物語と共に紹介します。

 

2023年3月、サンパウロ – ジャパン・ハウス サンパウロにて、異なる分野の日本人クリエーター8人による「DESIGN MUSEUM JAPAN:日本のデザインを探る」展を3月28日から6月11日まで開催します(2F/入館無料)。世界の第一線で活躍するクリエーター皆川明氏、須藤玲子氏、水口哲也氏、田根剛氏、原研哉氏、辻川幸一郎氏、乾久美子氏、森永邦彦氏が日本各地をリサーチ。各地域の〈デザインの宝物〉とその背景にある物語をボックスに詰め込み、まるで“旅するミュージアム”のように日本のクリエイティビティを紹介します。

会場には各リサーチを紹介する展示の他、NHKが特別制作したリサーチ時の映像、クリエーターたちの著書やテーマに関連する書籍も用意されています。また、来館者が「自分にとってのデザインとは何か」を考え、ブラジル各地の日常生活に存在する〈デザインの宝物〉を紹介するインタラクティブなコーナーも設けられています。

ジャパン・ハウス サンパウロの「DESIGN MUSEUM JAPAN:日本のデザインを探る」展では、JHSPアクセシビリティプログラムの一環として、音声、手話ガイド、触覚により鑑賞できるアクセシビリティツールもご用意しています。

本展はNHK、NHKプロモーション、NHKエデュケーショナルにより企画され、ジャパン・ハウス サンパウロを皮切りに、ロサンゼルス、ロンドンのジャパン・ハウス3拠点を巡回し開催されます。

展覧会情報

会期

2023年3月28日(火)~6月11日(日)

会場

(ブラジル)ジャパン・ハウス サンパウロ2階
パウリスタ大通り52番地

共催

ジャパン・ハウス サンパウロ、NHK、NHKプロモーション、NHKエデュケーショナル

協力

一般社団法人 Design-DESIGN MUSEUM

作品紹介

皆川 (デザイナー)

「山形緞通」 〈雪国のくらし〉を支えるデザイン (山形/山形県)

皆川明さんは、山形県山辺町に「山形緞通」の製造現場を訪れました。手織りで作られる厚みのあるじゅうたんは「緞通(だんつう)」と呼ばれます。雪に閉ざされ冬場の仕事がない地域に雇用を生み出そうと、戦前に中国から導入され、素足で生活する日本の生活様式に合うよう改良されました。1センチ織るのに1日かかることもあるという、ねばり強い手仕事です。皆川さんが見つけた〈デザインの宝物〉は、戦後、素材の羊毛が手に入らない時期に作られた「〈葛の根の糸〉で織られた緞通」。「なんとしても、緞通を作り続けよう」というものづくりへの強い意志にあふれています。「手仕事の良さは、〈見える〉というより〈宿っている〉もの」。会場には皆川さんがデザインし試作中の緞通も展示し、緞通の制作過程を実感していただきます。

須藤 玲子 (テキスタイルデザイナー)

3Dスポーツウエア」世界最先端の発想源は富山の「あんどん祭」 (小矢部/富山県)

須藤玲子さんは、富山県小矢部市の世界的なスポーツウエアメーカーを訪ねました。アスリートの身体を立体計測し、ピタリと沿うウエア。ラグビーワールドカップ2019での日本チームのジャージーは、日本躍進の立て役者とも言われます。ニットのメーカーとしてスタートしたこの会社が「立体的なスポーツウエア」へとかじを切ったのは、1970年代。スキーの隆盛と共に「ただのセーターではなく、身体の動きを助ける服を」と、身体に沿う立体裁断のウエアに挑戦。試行錯誤の末に成功へのヒントになったのは、技術者が子どもの頃から毎年作り続けてきた「あんどん祭り」のあんどんの、竹で作る骨格でした。須藤さんは技術者を「見た形をそのまま再現できる天才」とたたえます。ラグビージャージーはその最新の挑戦。「骨」は作れないけれど、布そのものを変化させて身体を覆う皮膜としてとらえ、新しい概念のスポーツウエアを生み出しています。「ひとりの身体に合う服」を創り出す〈オートクチュールの考え方〉が、最終的にスポーツウエアの歴史を前進させるのです。

水口 哲也 (エクスペリエンスアーキテクト)

「トランスアコースティックピアノ」 伝統の匠と最新のテクノロジーの出会いをデザイン (浜松/静岡県)

水口哲也さんは静岡県・浜松市に本社を置くヤマハのピアノに着目し、アップライトピアノの〈響板〉に電気的な〈振動装置〉(トランスデューサー)を取り付けることでピアノ全体がスピーカーになるトランスアコースティックピアノをリサーチ。ピアノをつくる「匠の技」と、現代の技術が出会うことで、〈今までにない音の体験〉が生まれることに心動かされました。水口さんのリサーチ映像やトランスアコースティックピアノなどを展示し、全身で体感できる〈いままでにない音の体験〉を味わっていただきます。

田根 (建築家)

「縄文のムラ」 1万年前の住空間にもデザインがあった (一戸/岩手県)

田根剛さんは、縄文時代中期の集落群を基にした御所野縄文博物館(岩手・一戸)をリサーチ。平成に入って発掘が進んだ遺跡では、竪穴建物復元など最新の手法による考古学研究が進んでいます。田根さんのリサーチ映像や御所野遺跡から出土した土器などを展示し、1万年前、縄文時代に人が集まり定住を始めたムラの暮らしに既にあった〈デザイン〉を紐解きます。

研哉 (グラフィックデザイナー)

「プロペラ」 合理性が生む揺るぎないかたち (倉敷/岡山県)

原研哉さんは、故郷岡山をリサーチ。世界の船舶のシェアが30%を占めるプロペラメーカーを訪ねました。瀬戸内海の海上交通を基に発展した会社です。大きい物では直径8メートルに及ぶプロペラ。その表面の曲面は、職人の手によって100分の1mm単位の微調整をしながら仕上げられています。「巨大なものの精度を上げていくときに、人間の手で仕上げるのは驚きだった」と原さん。そして、使われるときには決して人目に触れることはなく、ひたすら〈回転力〉を〈推進力〉に変えてゆく力学のために作られているものであるのに、その形は限りなく美しいと感嘆します。「個性の表出ではなく、合理性や自然の摂理にぴたりと寄り添う、無駄なく揺るぎないかたち」だと。

辻川 幸一郎 (映像作家)

「ぶちゴマ、そこから広がるさまざまなコマ」 おもちゃは人間が最初に触れるデザイン (姫路/兵庫県)

辻川幸一郎さんは「おもちゃは人間が初めてふれるデザイン」と考え、日本玩具博物館(兵庫県・姫路)を訪問。世界各地で多発的に生まれ発展してきたいろいろなコマに触れました。辻川さんのリサーチ映像やパペット「てっちゃん」でコマの発見と手遊びをテーマに作られた映像「てっちゃんとコマ」、日本玩具博物館所蔵の様々なコマなどを展示します。

久美子 (建築家)

「小さな風景」 無名の工夫の集積にデザインを見る (富士宮・伊豆/静岡県)

乾久美子さんは、普段から「小さな風景からの学び」を設計の基本としています。人々が大切にしている公共的な場所や習慣など、「普通に生活している人が工夫の積み重ねで作っている風景」を見つけ、写真に収めています。リサーチの対象となるのは、田畑の農業小屋から、まちなかのちょっとしたベンチまで、ありふれた風景をかたちづくるものたち。何気なく置かれているゴミ箱の配置にセンスを感じたり、組み合わされた色や素材の偶然のバランスに惹かれることがあったりします。気取らない地域の温かみや地元愛が〈共有財(コモンズ)〉となり、みんなで守り合うことで日常のかけがえのない場所が「生きられた場所」となっていく。そこから得られる発見やひらめきが自らの設計のヒントになっていると乾さんは言います。今回のデザインミュージアムジャパンで、乾さんは静岡県で〈水〉にまつわる「小さな風景」を探しました。富士宮の湧水、伊豆の港、熱川の温泉をめぐる風景を紹介します。

森永 邦彦 (ファッションデザイナー)

「ノロの装束“ハブラギン”」 着る人を守る意思が生んだデザイン (奄美/鹿児島県)

森永邦彦さんは鹿児島・奄美で祭祀を司ったノロが着用した”ハブラギン”という装束をリサーチ。柄と無地、シルクとコットンなど性質が異なる布を繋いで縫い合わせたハブラギンは、森永さん自身の原点であるパッチワークの概念をはるかに超えたものでした。本物のハブラギンやその周辺の資料も展示し、森永さんが出会った「服に、着る人を守るという強い意志が込められているデザイン」を紹介します。

ジャパン・ハウスサンパウロについて

ジャパン・ハウスは、日本の多様な魅力や政策・取組の発信を通じ、これまで必ずしも日本に関心がなかった人々を含む幅広い層をひきつけ、親日派・知日派の裾野を一層拡大することを目的に、サンパウロ(ブラジル)、ロンドン(英国)及びロサンゼルス(米国)に設置されています。2017年4月の開館から6年目を迎えたジャパン・ハウス サンパウロは、隈研吾氏監修による檜の木組みが印象的な外観の施設です。これまで、建築、技術、食、ファッション、芸術など様々な日本の魅力をテーマに企画展示を展開してきました。コロナ禍による休館の経験をふまえ、展示(リアル)とデジタル双方の強みを最大限に活用し、日本の多様な魅力を発信する拠点として進化を続けています。多言語展開、ブラジル国内及び中南米での展開にも注力しており、日本と中南米諸国を結ぶ架け橋としての役割も強化しています。2022年10月には累計来館者数270万人を突破。パウリスタ大通りの主要な施設として定着しています。

ジャパン・ハウス サンパウロの詳しいプログラムやその他のイベント等はこちらをご覧ください。
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その他のNHKサイト

12月の特集番組のサイト「デザインミュージアムジャパン」
https://www.nhk.jp/p/ts/96355WRQ8G/

NHKラーニングのサイト「これもデザイン」
https://www2.nhk.or.jp/learning/playlist/item/?plid=pl0018

その他の展覧会情報

展覧会図録